子供の遊びは、時代と共に変わる。たとえば今年で35歳になる筆者は、「スーパーファミコン→プレステ1世代」だ。小学1年生の時にスーファミを、小学5年生の時に初代プレイステーションを買ってもらった。『聖剣伝説2』の攻略を巡って友達と毎日議論していた世代、と言えば反応してくれる人も少なくないだろう。
では、今の小学生はどんなゲームで遊んでいるのだろうか。それはひと言で言えば「スマホでできるオンラインゲーム」である。
◆あの映画をゲームにしたら…
2000年に公開された大ヒット映画『バトル・ロワイヤル』を覚えているだろうか。この作品は「あまりに残酷」ということで国会でも取り上げられていたが、改めて映画の内容を振り返ってみよう。中学3年生の1クラス全員で殺し合いをさせるというもので、制限時間内に最後まで生き残った1人だけが無人島から帰還できる。武器は現地調達だ。
ここで、読者の皆様にはじっくり考えていただきたい。この設定をそのままオンラインゲームにしたら、どうなるのか?
『PUBG Mobile』や『荒野行動』などのオンラインゲームがまさにそれだ。100人以上のプレイヤーが、無人島の中で武器を拾いつつ最後の1人になるまで闘う。これらのゲームはスマホでプレイすることができ、その手軽さがユーザーに受け入れられ、空前のヒットとなっている。
◆クラフト要素が付加された「Fortnite」が世界的ブームに
数ある「バトロワ系ゲーム」の中でも子供たちから特に支持されているのが『Fortnite』である。2017年にリリースされたタイトルだが、現在では全世界に約2.5億人もユーザーがいると言われている。
これは無人島の中で撃ち合うだけでなく、建築物を建てることができる機能も付加されている。ゲーム用語では“クラフト要素”などと呼ばれているが、その場で資材を集めて建物を造るのだ。言い換えれば、敵の銃弾から身を守るための遮蔽物を自分で建築できるということでもある。
これがクラフト要素に富んでいて、非常に面白い。たとえば火力で優勢な敵を跨ぐように、その場で陸橋を建ててしまう。上手くやれば敵の背後に回り込むことも可能だ。従来のバトロワ系ゲームは「横の移動」の世界である。が、Fortniteはクラフト要素のおかげで「縦の移動」ができる。もちろん、その分だけ戦略性も増す。
FortniteはPC、プレイステーション4、Nintendo Switchでもプレイできるゲームだが、やはりスマホ版は携帯性に優れている。子供からして見れば、手軽に公園や友達の家にスマホを持って行ってFortniteをプレイすることができる。
また、Fortniteに限らずバトロワ系ゲームは「課金によるアドバンテージ」がまったくない。スマホゲームといえばソーシャルゲームを連想する人も少なくないはずだが、ソシャゲは課金によってプレイ時間やその実績に大きな差が出る。
ところがバトロワ系ゲームはeスポーツでもある。スポーツはルール上対等でなければならない。だから課金によってキャラクターの衣装や外見が変化することはあっても、能力自体は変わらないのだ。
◆新興国では国家が支援!?
これらのゲームを「たかだか子供の遊び」と考えてはいけない。海外では、FortniteやPUBG Mobileの大会を国家が支援しているということもある。インフラ整備が不十分な新興国ではなおさらだ。
その理由はいくつかあるが、ここではひとつだけ挙げよう。ネットインフラを整備する際、当然ながら電波塔を建てなければならない。しかし、該当地域の住民が必ずしもネットの重要性を認識してくれているとは限らない。「スマホもネットも必要ない」と考えている場合もある。そのような地域に電波塔を建設するとしたら、土地収用の問題が必ず発生する。それ以前に、ある一定以上の通信量がその地域から見込めなければ通信会社も関心を持たない。
だからこそ、地元住民にはネットの重要性に気づいてもらう必要がある。65年前のテレビ局がプロレス中継をキラーコンテンツにしていたのと同様、オンラインゲームはネットインフラ整備を促すのに欠かせないものになったのだ。
◆親のクレジットカードを…オンラインゆえの注意点も
意外にあなどれないバトロワ系ゲームだが、子を持つ親はいくつかの点に注意しなければならない。まず、オンラインゲームである以上対戦相手は世界各地にいる人々という点。「当然ではないか」と思われるかもしれないが、中には軽い気持ちでプレイヤーを誹謗中傷してしまう子供もいるそうだ。
子供だから、まだコミュニケーションが上手ではない……という言い訳は通用しない。プレイヤーの年齢問わず、誹謗中傷は許されざる行為。オンラインゲームには音声通話機能も搭載されている。親としては、ネットの向こうにも血の通った人間がいることをきちんと教えるべきだろう。
また、「バトロワ系ゲームは課金によるアドバンテージがない」と先述したが、一方で課金要素がないわけではない。キャラクターの外見を変えるためには課金が必要である場合が多く、それを目当てに子供が親のクレジットカードを拝借してしまうことも。1か月後、何も知らない親が請求書を見て悲鳴を上げるという出来事が本当に起こっている。
ただ、そうは言っても子供に対して一切のゲームを禁止するのは酷だ。「ゲームは1日1時間」という言葉はファミコンの頃から存在するが、あらかじめ子供と話し合ってゲームプレイに関するルールを決めておくのはトラブルを避ける上でも非常に重要である。<取材・文/澤田真一>
【澤田真一】
ノンフィクション作家、Webライター。1984年10月11日生。東南アジア経済情報、最新テクノロジー、ガジェット関連記事を各メディアで執筆。ブログ『たまには澤田もエンターテイナー』
(出典 news.nicovideo.jp)
<このニュースへのネットの反応>
コメント
コメントする